(「何に沿って考えてる?」の続き)
つる:
「よいしょ」って「ありがとう」に置き換えるとわかりやすいかなって思うんですが、
「よいしょ」=「ありがとう」じゃないんですか?
きさ:
そこのとこ、よく間違えられやすいかもなぁ。
よく「よいしょ」って言うと、「感謝」と思われるみたいだけど、
エネルギー的に全く違う。
「よいしょ」が必要や!って言ってるのに、
静かに黙って感謝されててもわからないでしょ?
”上”にはそれでいいかもしれないけど、人間には通じない(爆)
つる:
ああ・・・(爆)
人間相手には伝えないと分からないですもんね。
だからこそ言葉にして伝えたり、
お礼に変換して渡したりしないと、意味がない(苦笑)
きさ:
ある意味「よいしょ」の中に感謝も含まれるとは思うよ。
でも、それだけじゃない。
つる:
何かしてもらって「ありがとう」って思ってるだけだと、
コミュニケーションが成り立たないような気がします。
それだけじゃ「よいしょ」にはまだ足らない気が・・・
やっぱり伝えてなんぼですよね(苦笑)
「ありがとう」って伝えると、仕事の意欲を呼び起こせますよね。
それで、お礼を渡したりすると、その人が仕事を続ける生活を応援できる。
そうすると、またいい仕事をすることができて、自分がまた喜べる・・・
そういう循環を起こすのが「よいしょ」ですか?
きさ:
往復だけじゃなくて、循環が大事やね。
この間「世界のmade in Japan」が題材の番組を見てね。
ローマのベネチアで、バイオリンを作ってる人達の間で
made in Japanが人気があるよって。
その流行ってるモノは何かっていうと、「鑿(のみ)」やねん。
新潟の方の職人さんが作ったやつ。
つる:
あ!その番組、見ました!
きさ:
取材されたバイオリン職人さんは、鑿を60本くらい持ってはって。
「どや!いいやろ〜」って、すごい自慢してはるねん。
つる:
それはお好きな方には堪らない・・・(笑)
きさ:
りこちゃんなんか萌え萌えなのと違う?
りこ:
萌え萌えですね〜〜〜(^^)
きさ:
バイオリン作って40年くらいのおっちゃんがそんな風に萌えてるねん。
「こんな大きな鑿で、こんな細かいことまで出来る」とか言ってね。
大きくグワっと削るのから、端っこを繊細に削るのまで、
どれでもできる!って取材班に彫って見せてたよ。
つる:
それなら1本でいいんじゃ・・・
きさ:
「いや、全部集めたいやん!」って、萌え萌えやから(苦笑)
りこ:
確かに!(爆笑)
きさ:
バイオリン職人のおっちゃんは、7年前くらいにこういうのがあるって聞いて、
使ってみたらびっくりして注文したんやけど、
「売れない」って言われてショックで、
それでも何回もお願いして、4年間かかってやっと売ってもらえたって。
つる:
あはは(苦笑)
それ、実は注文待ちだったっていう話ですよね。
新潟の職人さんは、
「注文を断ったことは一度もないんですよ。
ただ、たくさんの注文があってもいっぺんには出来ませんのでね。
順番待ちして頂かないとだめなんです。
それが申し訳ないですけど、数年かかってしまうこともあるんです」って・・・
きさ:
ものすごく丁寧に丁寧に作ってはるねん。
りこ:
そりゃ仕方ないね。
つる:
いろんな番組で同じ鑿(ノミ)職人さんの取材を見ましたよ!
他の職人さんも「いいんだよ!」って言ってらっしゃる番組も見ました。
きさ:
そう、それこそが「よいしょ」やねん。
相互よいしょやね。
バイオリン職人さんが問答無用に「いい!」って「よいしょ」してて、
鑿職人さんも「使ってもらえてありがたいです」って「よいしょ」してる。
どっちもあるからこそ、バイオリンを作れるし、鑿も作れる。
それって何やろう?って調べたら、生活の為の代価だった。
バイオリンを作る為には、鑿がないと。
鑿を作るには、注文を貰わないと。
お互い生活を維持していかないと、作り続けられないわけ。
その間に介在するのは、お金。
はじめは食べ物だったんやけど、離れたところに持って行くには面倒だし、腐るし、
キャベツばっかり100個もあっても食べきれないし、誠意が通じないってことで、
腐らなくて便利な貨幣が使われるようになってきた。
りこ:
それなら、お金は二次的なモンってことですよね。
最終目的じゃないってこと。
きさ:
うん。お金を払う側も「ありがとう」だし、お金を貰う側も「ありがとう」やねん。
(「理屈抜きで『嬉しい』こと」に続く)