モラルはどこで培われる?

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「困っていることがある」の続き)

きさ:

「よいしょ」がない国は、やってもらったことを「おおきに」ってするのが、
どうして根付かなかったか。
なんでやろう?って考えて、何か仕組みがあるのと違うかなと思ってね。

つる:

そういえば前に、ラッキーな国・アンラッキーな国っていうのを
一緒に調べたことがありましたよね。
それと物凄く繋がっている気がします。

きさ:

うん。多分ね、宗教が絡んでる。
それがある時期までは人々の生活に役に立ってたんやけど、
ある時点から、もう人々の生活の足を引っ張るようになってしまったのと違うかなぁ。
イスラム教なんか完全にそうなってるやんか。
女の人は勉強したらアカンとかの教えが原理主義だと思ってるやろ?
何が技術の進歩を邪魔してるのかとか、よ〜く考えないとアカンと思う。

つる:

それは国内の話でもありますよね。

きさ:

そこに門居化っていうのもあると思うよ。

つる:

(苦笑)

きさ:

井戸掘りの話に戻るけど、日本の井戸を掘ってる職人さんが現地に行って、
みんなに井戸の掘り方を伝えてた。
現地の道具で、できるだけ簡素化して、
エッセンスを伝えてなんとか理解してもらおうとしてるわけ。

現地の小さなその島には、井戸は1個もない。
だから、何百年も何千年も、片道1時間も2時間もかけて、子供に水を汲ませにやってる。
それが朝の仕事なわけ。
そうしたら、子供は疲れきってしまって、勉強も遊びも何もできない。
だから「井戸を掘れるのはいいね。井戸があるのはいいね」って、
みんなで井戸を掘りましょうってことで、
村の人達とかが集まって井戸掘ることになったんやけど・・・

村の井戸掘りの1番弟子の人が、冠婚葬祭があって3日くらい現場にいなかったんだって。
それで帰ってきたら「なんだか進んでないなぁ」って。
なんで進んでないのかっていうと、サボってたから。
「なんでサボるの?井戸はいるんやろ?
作ってくれるって言ってるのに、なんでサボるの?」って聞いたら、
「毎日朝から畑して疲れてる。そのうえに井戸掘りはしんどいもん」って。
しんどいからサボってたわけ。

問題は、「人の目がなかったらサボったほうが勝ち」という考えと、
「人の目がなくてもやらないとアカンことはやらなきゃアカンで」という考え・・・
なんて言うのかな・・・モラル?その差やねん。
「モラルを守らないとアカンなぁ」っていう社会と、
「人の目がない時はサボらないと生きていけない」っていう社会との対決やんか。
それって、どうしようもない差があるやん!

きさ:

随分前に中国に仕事で行ったとき、
「ついでに冷蔵庫の工場を見て来て!」って頼まれて、見に行ったことがあってね。
「なんでかわからないけど、あそこから出荷される冷蔵庫はよく壊れてる。
見るだけでいいから、見てきてくれないか?」って。

冷蔵庫が緩衝材と段ボールに包まれて、
工場からベルトコンベアーみたいなので出てきて、
運搬するためにトラックに載せるところがあるんやけど、
その時に、ベルトコンベアーからトラックに蹴飛ばし落として載せてたんよ。

つる:

あちゃあ・・・そりゃ壊れますね・・・(唖然)

きさ:

うん。
「なんでそんなことするの?壊れるやん」って言ったら、
「大丈夫。ちゃんと箱に入ってるから」って。

つる:

えええーっ(T_T)

きさ:

「何のために箱に入ってると思う?」って聞いたら、
「壊れないようにするためやろ?」って食ってかかってくるわけ(笑)
「違うよ!運搬する時に振動とかで壊れないようにするためやで!」
っていう話があってね。

つる:

そんなの、蹴飛ばして落としたら壊れますもんね・・・

きさ:

「あんたが蹴って落とすことを考えて、
高いお金を使って箱に詰めてるのと違うんやで」って。
だから、いまだに「人が見てなかったらサボらないとあかん」みたいな教えというか、
常識がそこにはあるんやろうな。

つる:

「人の目がなくてもサボったらあかん」っていうのは、
私達がよく聞く常識ですけど、そうじゃなくて、
「人の目がなかったらサボらないとあかん」っていう常識ですか?

きさ:

うん。
「取れるモンは取らないとアカン」っていう常識。
それはもう中華思想にあるやんか。
「軒を貸して、母屋取られる」っていう教えと、
「軒を貸したら母屋取られるから、貸さない」っていう教えと、二つある。

中国でいう教えには、「軒を貸したら母屋取られるから、叩け」っていうのもある。
だから、軒先に乞食が来たら叩きまくる。
それが万里の長城の考え方。
いまだにその考え方でずーっと続いてるわけよ。

で、華僑なんかが母屋貸すのは、大きくして分捕ろうとしてる。
だから、捕れる値打ちがあるまで育ててくれるのは有り難いけど、
大きくなりすぎて邪魔になったら叩きよる。
叩き潰しにかかるよね。

つる:

それって中国だけの話じゃなくて、
いろんな所である富裕層と貧困層のパターンですね。

きさ:

それってもうなくなると思わない?
「よいしょ」がないんやもん。

つる:

「工夫しても報われないのなら、しないでおこう」ってなりますよね・・・

きさ:

だから、国ごとのラッキーとアンラッキーっていうのは、
「よいしょ」の話がそこまでいっちゃってるんやと思うな。
工夫は技術やん。
技術が仕事になる社会と、ならない社会。
人の目を盗まないと生きていけない社会って、絶望的やで。

つる:

(頷)

きさ:

最近よくTVに出てくる若い中国評論家の人が
「日本なら幼稚園で教えてもらうマナーみたいなものを、
知らないまま大学生になってる人がいるから、全然話にならない」
って言ってたんやけど、それと同じ話だと思う。
絶望の世界と「よいしょ」が通じる世界とでは、もう全然違うと思うよ。

つる:

とても良く分かります。
「そんなの当たり前」って・・・
いつの間にか培われてるのって、実は物凄いことですよね。

(終)

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